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August 19, 2021

FUJI ROCK FESTIVAL ’21 出演にあたって

FUJI ROCK FESTIVAL ’21 出演にあたって

依然として続くコロナ禍で、今年のフジロック開催については賛否両論多くの意見があると思います。毎日変わってゆく状況の中、ここ数週間僕たちも何度もチームで話し合いを重ねてきました。

今年のフジロックに、DYGLは出演する予定です。正直この未曾有の感染症の拡大状況では出演しない方が良いのではないか。今回の出演に関して、毎日のようにチームで相談をしたり、主催の担当者に質問をさせて頂いたり、自分たちとしても日々情報を集めておりました。

もし当日にでもイベントが中止という判断になった場合には、その判断を全力でサポートするつもりです。それも一つの選択肢であると思います。

しかし現状、繰り返される自粛の呼びかけに対して十分な補償がなされていない以上、業界全体の自主的な自粛努力だけでは限界点に達し始めています。感染症から守られなければいけない生活と、経済的、社会的な繋がりから断たれることから守られなければいけない生活。音楽家に限らず、多くの人々がその板挟みの中で生活をしている状況です。

悩んだ結果、イベントが公式に中止されない限り、今回は自分たちから辞退をしないことに決めました。

今回仮にイベントが中止になっても、あるいは僕たちが出演を辞退しても、それでもまた次の現場はやってくる。そしてまた同じ選択が迫られる。補償がない中でも自粛ができるのか。それとも感染症対策をしながらでも、仕事に出なければならないのか。踏み絵のような状況が繰り返されます。

これまで、既に一年以上の間、多くの公演が中止され、ライブハウスが閉鎖され、それでも出来る範囲限界まで、必死に自粛生活を送ってきた人たちが周りにも多くいます。しかし、自分や、家族の明日の生活がかかっている状態で、目の前に仕事があるのに、補償のない自粛要請に従うことで仕事を失う選択をし続けるのは多くの人にとって困難です。自分自身や周りの、そして社会にとっての感染リスクを考えると、本心では安心して仕事を休みたい人も多くいる。明確な目標の見えない、補償なき自粛要請の中で、飲食店は再度開き始め、街や電車は人で混み始め、各地方のイベントも開催される中、このままただ黙って止まれなくなってきているのはエンタメに限らない他の多くの地域や現場にも言えることだと思います。

「音楽なんて特殊な仕事に拘らず他の仕事を見つけたら良い」…実際、場合によっては仕事を変えてでも自分や家族の生活を守ろうと決める人も既にいます。しかし次の仕事がすぐに見つかる保証はない。それなら極論、一旦生活保護を受ければいいという方もいます。状況によっては勿論その選択肢もあり得るでしょう。ただ、自粛の先には、更なる自粛が待っているだけの状態が続いてしまっている以上、無軌道な自粛社会により失業者が増えることをただ容認することは、問題の解決になりません。経済的のみならず、社会的な役割の剥奪により命を絶ってしまう人もいる。ここにも、考慮すべき命の問題があります。

今の政治に賛成でも、批判的でも、思ったことを言える社会は大切だし、そうした議論はこれからも続いていくべきです。ただ意見の違う人たちがお互いの方を向いて必要以上に憎しみ合う事態を避けるには、政治主導の、最低限の生活の補償と、足並みを揃えた感染症対策が本当に必要です。なんでも政治のせいにするな…そんな声も聞こえてきます。確かに、自分たちで出来ることも沢山あります。それについては努力すべきだし、批判の対象になることも受け入れなければいけない。でも「政治にしか出来ないこと」も必ずあります。感染症拡大を懸念する人、経済的困窮を危惧する人、社会的な繋がりを必要としている人、どのサイドにいる人も助けて欲しい…ただそれを強く願います。

この状況では迷いながら出演する事も、迷いながら辞退することも、音楽家にとっては地獄です。分断を生み、憎まれながらやる音楽なんか続けられないと辞めていく人も、この先増えていくかもしれない。今は、どの程度社会活動をしても良いのか。その判断が曖昧な自粛ムードに左右されていては、人によって基準が異なることで分断が生まれ続けてしまう。だからこそ、社会全体で足並みを揃えた感染症対策と、その協力に伴う国民の生活を守る補償が提示されて欲しい。今回はそうした葛藤を、自分たちの地平から見える状況として発信させて頂きました。

当然、この様な状況下で開催されるイベントを手放しで正しいと言い切ることはできません。今回の決断を後々後悔するのではないかと、本当に萎縮する思いです。納得して欲しいとも言えません。ある視点から見れば確実に間違っているとご批判を受ける事も承知です。ガッカリもされるでしょう。本当に情けない思いです。
しかし、何度考えても、個人や企業の自主的な頑張りだけに頼る日本の今の自粛要請だけでは、多くの人の心や生活、文化が崩壊してしまう。心苦しくも、開催までの残された時間にイベント自体の中止が無い限り、自分達の出来る最大限の感染対策を呼びかけながら、自分たちの立場で出来ることをやるしかない。これが、僕たちの考えです。

そして、特に今回フジロックにお越しくださる皆さん。既に相当数の方が抗原検査の申請をされているとのことです。本当にご協力ありがとうございます。まだの方は、是非確実に受けて欲しい。そして可能であれば抗原検査に終わらず、自主的にでも直前にPCR検査を受けて欲しい。今までの常識では、守れないものが多くあります。毎日の検温、参加当日までなるべく外に出ず人と会わない、そして少しでも体調が悪ければ無理をしないよう、心がけをお願いします。

今回は普段のフェスと違い、感染症であるコロナ禍での開催です。願わくば、複数人での来場はできるだけ少数に抑え、 お酒の持ち込みは120%やめてください。マジです! 場内でのルールは、場外にも適用される気持ちで、公共交通機関での移動の間、宿や料理屋など、立ち寄るすべての場所での感染症対策を徹底していただきたいです。声を出さない、マスクをする、人と距離をとる。

開催中は天気が荒れることが予想されています。自分と、自分の周りで必要になる人たちの分も想定して、持っている限りのマスクの予備を大量に持って来てください。ひどく雨が降れば確実に濡れてびしょびしょになり、使い物にならなくなります。清潔なマスクに定期的に変えられるよう備えをお願いします。

こんなルールだらけでマジメ腐ったフェスはフェスじゃ無い、それも死ぬほど理解できるのですが、通常通りのフェスを楽しむ判断基準を一度傍においてでも、大切なものを守るために必要な行動を取っていただきたい。(しかしルールを守れない方々を同調圧力で潰すような事も危険な心理だと思うので、気をつけて欲しい。難しいことですが)

そしてそこまでして来たくない、そんな多くは守れないと思う人は、どうか今回の来場について再検討してみてください。何の権限でそんなことお願いするのかと言う感じですが、もはや一音楽ファンとしてお願いします。フジロックとしても今回希望者全員への払い戻しの対応を受け付けており、ライブ配信もある予定です。このフェスを安全で意味のある開催として成功を願う上で、家で配信を鑑賞するのも一つの選択です。自分たちにとって大切なものを守るため、今この時代にだけ通じる常識も必要なのかもしれません。コロナが落ち着けば、必ずまた騒げる。でも今だけは、必要な対策を、必要以上に取っていただきたい。よろしくお願いします。